2013年11月25日月曜日

秋葉系DJってなんだろう

先週、自分のTwitterTLで話題となってたDJ関係の本が発売された。それがこちら。


秋葉系DJガイド。ということで、早速買って読んでみました。結論から言うと、良くも悪くもこの本で語られるシーンに少しでも触れている人たちにとって、すごく面白い本として完成されてるなと思った。本の完成度としてはとても高いし、面白いので買いです。個人的意見としてはゲーソンと書くならば、Chiptuneもきちんと掲載してほしかったなとか、茶箱は載って欲しかったなとかありましたが、それは置いておく。
「内側の人にとって面白い本」と言った理由の第一は、読み手が『秋葉系』という言葉への理解がなされてる人かハードルを課せられる点。

売り文句で

“アニソン/アイドル/ボカロ/ゲーム”系

と大きく打ち出されてる通り、秋葉系という言葉の中に含まれるコミュニティは、この4つの軸以外にも、ものすごく多い。さらに、掲載される注目DJ50人の中にはこの枠に収まっていない人も多々いる。ネットレーベルにJ-POPからハードコア、ダブステップ、ドラムンベース等クラブミュージックの人などなど。それらが全部まとめて放り込まれてる。ある意味、EDMという括り方に似てる気もする。(EDMのほうがクラブミュージックという音楽特性を包括してるだけなのでまだわかりやすいかも...)

秋葉系周辺のシーンを全く知らない人から、自分がよく質問されるのがこれ。

「秋葉原によくいるからアイドルも詳しいし好きでしょ?」

僕は秋葉原によくいるけど、アイドルは全然わからないし、あまり興味がない。けど秋葉系のシーンを知らない人にとっては、アニメ好きも、アイドル好きも、ゲーム好きも、みんな同じに見えてるのだ。クラブを知らない人がテクノ好きに「クラブによくいるしHIP HOPとかも好きなんでしょ?Yo!Yo!って感じ?」と聞くのと一緒だ。

あえてなのかは分からないが、この本にはその初歩段階の『秋葉系』という言葉に、どれくらいのコミュニティをまとめてるかの解説が少ない。冒頭からシーザー氏、いぬ氏、WAN氏による「秋葉系DJシーン今昔物語」という対談で、ほぼアニクラの歴史について語られるため、『秋葉系』に含まれる多様性を理解しない初見の人からすれば「あ〜秋葉系ってアニソン流す人か」となってしまう。

そもそも『秋葉系』という単語自体に、嫌悪感を抱いてる内側の人もTwitterでよく見かけたが、これに関しては『秋葉系』と命名したというより、単純に他に適当な単語が無かったのでは?と個人的には思ってる。上記した様々なジャンルを包括する上で秋葉原という名前はイメージを得やすいし、それぞれ少なからず関係してる。ネットレーベルだけ若干の違和感を感じたが、知らない人からすれば昔のアニメサンプリングのイメージは今だ強いし、最近はアイドル曲をやってるイメージも強いので、客観的に見れば包括されるのだろう。分解系なんてアニソンリミックスを全くリリースしてないのに「アニメネタのイメージだった」とか言われるし。
それと『秋葉系』ではなく『サブカル系』という、各所に角が立ちそうな単語も、一瞬頭を過ぎったが、こっちのほうが角が立ちそうだから無しだろう。それにクラブミュージックも、違うシーンの人からすればサブカルに分類されることも多々あるだろうし。なにより、わかりづらい。
そういう意味で『秋葉系』という名前は、毛嫌う人の気持ちも分かるが、外側の人に向けて、包括した名前という意味では機能的かなと思える。
※「地方でやってる人は〜」とか「渋谷とか川崎でやってるのに〜」とか言うのは、ハウスとかデトロイトテクノを日本でやってる人などが虚しくなるし、やめましょうよ。土地というよりも、秋葉原が持つイメージ自体が概念化してると思うし。


自分はアニソンが好きなので、最も四つ打ちのクラブと対極にいるかもしれないアニソン原曲イベントに関して、少しだけ掘り下げてみる。アニソン原曲クラブは名前の通り、原曲のアニメソングのみがかかるクラブイベントだが、ハウスやテクノ等で全くアニソンを知らないDJに話すと非常に面白がる点が多い。

一つ目は「曲はテレビのアニメ本編で使用される箇所しか使わない。要は通常1サビまでしか使わない」。アニクラに行かない人はアニソンがフル尺で流れてると思ってる人が多いが、基本はアニメで使用されてる部分のみで、1曲平均1分30秒。そのため1時間のプレイだと平均40曲以上のクイックミックス。繋ぎはカットインや、ミックスだとしても2小節や4小節で繋ぐことがほとんど。(カップリング曲とか挿入歌とかキャラソンとかサントラとか、どのへんまで流すかはイベントによりけりだったりするので、ここでは触れません)

二つ目が「イベント内での曲被り御法度なイベントが多い」。これは自分も初めて知ったときビックリしたが、本当に後半のDJとかは、イベント中フロアの隅で曲が被らないように、自分のDJの時間まで寡黙に他のDJを聴いてる。

さらに特筆したいのはアニクラにおけるVJ。面白いのが、DJのモニタリングを分配して、VJもイヤホンで聴いている。これは次に流れるアニソンを把握して、準備しておくためだが、DJ側のモニターで少しだけ流れたイントロやAメロを聴いて、何千とあるようなアニメを瞬時に判断して準備している。この知識量がハンパじゃない。しかもちゃんと、何のアニメのオープニングなのかエンディングなのか挿入歌なのかまで判別して、リップシンクまでするVJもいる。自分も10年ほどVJをやっているが、これだけはどう頑張ってもマネ出来ないくらいに凄い。。。

とりあえず、自分もmograが出来てからアニクラに行くようになった新参者なので、新参の視点で面白かった点を書いてます。間違ってる点あるかもしれないし、、、もっと詳しいこととかは、その手のプロに聞いてくださいと、言い訳しておきます。アニソン独特の選曲方法とかもあるんですが、このあたりは本誌が詳しく書いているので読んでください。

アニソンに関しては前述もした通り、イベントごとで少しずつ趣旨が違ってくる。上記した原曲のみでのイベントもあれば、リミックス音源を多用するクラブミュージック寄りのイベントや、アニソン以外にボカロやゲーソンなど様々なジャンルがかかるなどなど、一言にアニソンイベントと言っても、イベントによってその様はまるで違う。お客さんの中にも原曲イベントは好きという人や、リミックスだから聴きたいという人に、なんでもありな人まで三者三様だ。

アニメだけを取ってもまだまだ書けることが山のようにあるし、それ以外のコミュニティもそれぞれ独自の進化と形成を辿っているため、『秋葉系』という言葉がどれだけ情報量が多いのかがわかると思う。

この膨大なコミュニティが放り込まれた『秋葉系』だが、個人的に思う一つの共通点は、アニソン/アイドル/ボカロ/ゲームは全て音楽ジャンルではないということ。これは本誌でもWAN氏が"タグ"と答えているように、このシーンがこれだけ盛り上がった要因の一つでもあると思う。


お客さんの多くは自分が知っていたり、好きだったりするアニソン/アイドル/ボカロ/ゲームの曲に極端に反応することが多い。もちろん知らなくても楽曲そのものが良いから、盛り上がる場面も多々あるが、あくまで客観的に見たらシーザー氏がこのようにツイートしてるように、知っていることがかなり前提にされる。


つまり流れた曲に対して、バックボーンを楽しむ側面が強いシーンだと思われる。曲を聴けば、好きなアニメのシーンや、ゲームのストーリーなど思い起こされ、それを楽しむ。その楽しみ方の表現手法が、様々に分岐して混在してるのが現在の『秋葉系』のシーンなのではと思う。ある意味、二次創作の精神が根底にあるのだと思う。原曲は二次創作ではないという、もっともな意見もあるかもしれないが、楽しみ方の二次創作という意味で捉えてください。
そう考えると色々しっくりくるし、最初にこのタグと音楽ジャンルがすべて包括していると書いた自分のテキストも少し間違ってるとわかる。混在しているというより、多種多様のタグと音楽ジャンルがぶつかり合うことによってシーンが形成されてる気がする。DJ紹介でも表記方法を「DJのプレイジャンル」ではなく、「ジャンル:〇〇 タグ:〇〇」って表記の仕方をしたほうがわかりやすかったのでは。

二次創作カルチャーは、一次創作への愛が一番重要となると自分は考えている。音楽に限らず、それらはイラストでも、コスプレでも、小説でも幾度となく出てくる問題であるし、スキルが愛をカバーしてしまうこともあるかもしれない。けれど、いくら上手くても原作の理解がない設定の同人誌は読みたくないし、どんなに可愛くても好きなキャラのコスプレイヤーが喫煙所でタバコを吸ってるところなど見たくもないし、音楽だってそれと同様だ。本誌に紹介される秋葉系DJとは、きっとタグの元となる原作への理解や愛が深いことが重要なんだと自分は思う。というかそう願う。

これだけ細分化の手伝いみたいなブログを書いておいてアレですが、このシーンに関わるDJやVJやお客さんは、とにかく受け入れる心が広い。音楽ジャンルもタグも、面白いと思うことや、良さがあるものは、すべからく貪欲に掘り下げるし、自分から発信していく。その精神こそオタクの気質であり、このシーンがここまで膨大な情報量となり、広がった要因なのかなと考えながら、今回のブログは以上。とりあえず、少しでもこのシーンに興味がある方はmograなどに遊びに来るでも良いし、最初に載せた雑誌も読んでみてはいかがでしょうか。秋葉系DJってなんだろうという答えが、みんなで共有できたらと思います。

2 件のコメント:

  1. まさに、企画の段階で「他に適当な単語が無かった」から秋葉系という名前にしました。
    正しい認識を得てます!

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    1. どうもです〜。やっぱりそういう感じだったんですね。
      他に適正な用語が思いつかなかったんですが、最後のほうの考えが今後もっと適正な言葉が見つかるヒントになりそうな感じもしました。

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