2012年10月1日月曜日

ネットレーベルの"フリー"と"フリー"

10月1日から違法ダウンロード刑事罰法が施行されるようで、twitterでもちょくちょくツイート見かけた。「音楽は終わった」とか「メジャーはもうダメだ」とかとか。そんで違法ダウンロードとかの話題になると絶対出てくる「ネットレーベルは違法じゃないです!」とか「無料のネットレーベルがこれからは注目される」みたいなのもチラホラ。

http://www.stopillegaldownload.jp/
このサイトらしい

刑事罰施行によって売り上げが落ち込んでいた音楽CDなどが売れるようになるかどうかは知りませんが、売られている音楽が刑事罰でダウンロードできなくなったから無料音楽に着目しようという流れは「正直どうなの?」って疑問を感じたりした。
自分もネットレーベルというCreativeCommonsライセンスでの音楽レーベルをやってはいるけども、「うちなら無料ですよ!」なんていう謳い文句は絶対にしたくないし「無料だから聴きにきました!」なんて理由だけなら聴きにこなくて良いですとか思ったりすることもたまにある。まあ、無料じゃないネットレーベルも多々あるし、無料という部分がキッカケになって好きになるという場合もあるので、一概に全否定するつもりではないので、あしからず。

「じゃあなんで分解系はフリー(無料)でやってるの?」って話しになりますが、その前にあくまで分解系はメジャーレーベルでもなく、インディーレーベルでもなく、フィジカルリリースもしていなく、もはやレーベルという定義(?)もあてはまらないmp3ダウンロードサイトということをまず前提にする。
無料でやるというのはより多くの人に聴いてもらいたいという部分と、創作物を通してコミュニケーションを自由に取れる場所になりたいという部分が大きい。特に後者はネットレーベルというCreativeCommonsライセンスで活動してるからこそ出来ることが多々あると思う。例えば、表記を守れば音源に映像をつけたり、リミックスしたり、カバーをしたり...。もしくは分解系はアーティストとの所属契約とかないので、分解系を通じて聴いた他レーベルがCDリリースに繋がったり、ライブ出演に繋がったり...、まあこのへんは通常のインディーレーベルでもあることだが、所属契約を持たない部分がよりフリー(自由)カルチャーを生み出していると思ってる。その面白さをわかりやすく伝えつつ、皮肉も含めてやった企画が先日の分解系リリース"CreativeCommandsCompilationData"通称CCCDのつもりだった。
テーマは下記

日本でクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにて公開されているネットレーベル楽曲を、2レーベル以上3曲以上セレクトし、分解・継承して新たな作品を生み出す



こういう企画はCreativeCommonsをつけるうえでの楽しさであるし、非営利だからこそ出来る楽しさでもあると思ってたのでやりたかった。CC規約の中にある「一次創作者への尊敬」の部分に抵触してるんじゃないか?と指摘されれば、見方によってはそのように見えることも多々あると思う。けれど、そういった点を背負ったとしても、限りなくフリー(自由)に面白みあることをを提示しようと踏み切ったのがこのコンピのつもりです。

これらのことはクリエイティブコモンズで
CCライセンスはインターネット時代のための新しい著作権ルールの普及を目指し、様々な作品の作者が自ら「この条件を守れば私の作品を自由に使って良いですよ」という意思表示をするためのツールです。More: http://creativecommons.jp/licenses/#ixzz283UZuDsM Under Creative Commons License: Attribution
と明記されてる通り、これがネットレーベルにおける面白さとフリー(自由)さだと個人的には思う。まあただ一般認識としては、フリーレーベルと一括りに書くことによって「無料レーベル」と「自由なレーベル」という2種類の認識が生まれることは分かるし、どちらもネットレーベルがよく実行していることなので、CCライセンスがなにかをよく分からない人にとってはフリー(無料)が売りと捉えるのも仕方がないことだとも思う。

この辺に関してはドミニク・チェン氏の
【インタヴュー】フリーカルチャーという思想をめぐって:ドミニク・チェンとの対話
を読むとより面白いしわかりやすいかも。

正直なところ、無料のネットレーベルを運営する上で、音源を創ってもらう人にお金という対価が払えていないのは自分の中でかなり罪悪感がある。もちろん創ってくださる方は「別に良いよ〜、聴いてくれる人が増えるし面白いよ!」って言ってくれる。とても嬉しいけど、お金というのはやはりわかり易い対価であるし、今後の制作面においても必ず必要になってくるモノだと思う。その音を作るラップトップもシンセもオーディオインターフェースもモニタースピーカーもソフトウェアも、当たり前だけどお金がなければ始まらない。
特に分解系が取り扱うエレクトロニカというジャンルはユーザーの絶対数はやはり少ないと言わざるを得ない。beatportやiTuneでの総合ランキングでもelectronicaが食い込むことは稀だし、クラブミュージックでもHouseやElectroのほうが売れているのも周知している。
けれど、そういうユーザー数が少ないとしてもこのジャンルが好きで、平日は夜まで仕事をして、夜中寝る時間を削り次の日の仕事の間で楽曲を作っているようなトラックメーカーと数多く接すると、彼らの費やしてる時間や努力をネットレーベルでリリースすることが、一概に「無料だから!」という言葉で消費されることは、運営する上でとても悲しくなる。自分が分解系を始めたのは、無料で音楽を落とさせてレーベルを有名にすることなんかが目的ではないから。(いやレーベルを有名にしたくないと言えば嘘だけども、、やりたいことの過程に知名度を上げる必要性があるだけって話し)
分解系をきっかけにインディーにてCDを出す人もいれば、同人音楽でCDを個人販売する人もいるし、bandcampで音源を売ってる人もいる。名前を検索すればすぐに出る情報だし、個々のTwitterを見てもSoundcloudを見てもそれは分かる情報なはず。
だから分解系を聴いてくれてる人はもちろんネットレーベルを聴いてくれている人は「無料だからネットレーベルを巡る」ということに留まらないで「ネットレーベルで知ったからこの人の売っている音源も買った!」という方向になったらなと、とても思う。

10月8日に分解系主催でやるOUT OF DOTSは物販コーナーが設けられる。出演するアーティストやレーベルのCDが10種類以上並ぶはずだ。
OUT OF DOTS公式サイト
http://outofdots.com/
当たり前だが、イベントでの物販はAmazonで買ったりするよりもアーティスト本人が得られる金額が多い。手数料取られないし。なによりインターネットで知ったアーティストを現場で買うというのは作り手にも聴き手にも嬉しいコミュニケーションが生まれると思う。だから、この記事を読んでてOUT OF DOTSに遊びに来る人はぜひ気に入ったアーティストのCDを買って、その人の応援をしてほしい。お金を払わない音楽文化が当たり前になったら、音楽を作る人はどうやって生活をし、音楽を生み出せるのか。
一番最初に載せた違法ダウンロード刑事罰法のサイトでその法案自体には一部疑問も感じるけど、担当者の「音楽がタダとは思わないでほしい」は決して一概に間違ったことではないと思う。

あと最後に言い訳がましく書くけど、ここに書いたことは僕個人の考えで、きっとマルチネのtomadはもっと大きな思想があってネットレーベルをやってるのだろうし、アルテマ兄弟もきっと違う面白さを考えているのだろうし、分解系のもう1人の主宰Go-qualiaも少し違う考え方を持っているかもしれない。各々がそれぞれの方向性でフリー(自由)に考え行動した結果が、今のネットレーベルを形成してることは付け加えておく。

だいぶ殴り書きになってしまってとりとめないけど、今回は以上。